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2025-06-04

toitta βリリースから8ヶ月の進化を徹底解説 - イベントレポート

toitta βリリースから8ヶ月の進化を徹底解説 - イベントレポート

2025年4月28日、「プロが語る! toitta βリリースから8ヶ月の進化を徹底解説」と題したウェビナーを開催しました。司会を務めたのは、toittaの事業責任者である米山。ゲストとして、toittaエバンジェリストである羽山祥樹氏とタグチマリコ氏の2名に登壇いただきました。

このイベントでは、2024年7月末にベータ版をリリースし、同年10月に正式版となったプロダクト「toitta」の進化の軌跡を振り返りました。約1時間のメインプログラムでは、はてなの米山がtoittaの開発背景を説明するとともに、開発初期からテストユーザー として協力いただいてきた羽山氏とタグチマリコ氏と共に、書き起こし精度の向上、切片化の精度向上、自動グルーピング機能、レポート機能といった主要機能の進化と実際の活用事例について解説しました。このレポートでは、イベント内容と、UXリサーチやデザインの現場にtoittaがもたらした変化について、実務者の視点からお届けします。

ゲストプロフィール

日本ウェブデザイン株式会社 代表取締役CEO
toittaエバンジェリスト
羽山祥樹(はやまよしき) 氏

HCD-Net認定 人間中心設計専門家。使いやすいプロダクトを作る専門家。担当したWebサイトが、雑誌のユーザビリティランキングで国内トップクラスの評価を受ける。2016年よりAIシステムのUXデザインを担当。専門はユーザーエクスペリエンス、情報アーキテクチャ、アクセシビリティ。NPO法人 人間中心設計推進機構(HCD-Net)理事。

HCD-Net認定 人間中心設計専門家
UXデザイナー
toittaエバンジェリスト
タグチマリコ 氏

1994年東京都生まれ。高校在学中にデザイナーとして活動をはじめ、複数の制作会社・開発会社にて、広告・Web・アプリケーション開発のプレイヤーからマネージャー・経営者を経験。現在は、UXデザイン・人間中心設計(HCD)を起点としたサービスデザイン、ブランディング、調査分析、UI・ビジュアルデザイン、人材育成、クリエイターコミュニティ『クリエイターズ・シナジーカフェ(シナカフェ)』運営など、表層デザインから哲学まで、多角的にデザイン行為の在野研究をつづけている。

参考: 日本ウェブデザイン株式会社の羽山祥樹氏、タグチマリコ氏が「toittaエバンジェリスト」に就任しました

toittaの現在地と進化の軌跡

toittaとは何か

toittaは、「ユーザーがなんといったか」に深く向き合えるように設計された、生成AIを活用した発話分析ソリューションです。名前自体も「なんといったか」が転じて「toitta」となりました。

toittaの主な機能は大きく3つに分類されます(2025年5月時点)。

  • データ生成:アップロードされた動画・音声ファイルを生成AIを使って、書き起こしと切片という2つのデータに約30分で自動生成
  • データ可視化:ソース、グルーピング、レポートという3つの手段で出力したデータを多角的に確認・分析
  • データ共有・出力:外部ツールへのデータ出力など、共有を便利にする機能
toittaの主要機能3つ
toittaの主要機能

これらの特徴によって、インタビュー実施後の工程を大幅に効率化します。

誕生の背景

toittaは、はてなの新規事業を作るプロジェクトの一環として誕生しました。事業機会を探索するために年間244件ものインタビューを実施する中で、インタビュー結果の分析に大きな課題を感じたことが開発のきっかけでした。

米山は「書き起こしをして、切片を切り出し、Miroに貼り付けて、それを動かし、みんなでああだこうだ議論する。この工程を全て人力で200件もやるのは、かなり無理があると感じました」と当時の課題を振り返ります。

この課題を解消するために最初に作られたのが、toittaの前身である社内向けツール「書き起こシャーク」でした。これは動画をGoogleドキュメントに自動で書き起こし、Googleドキュメントに切片の形でコメントを書くと、Miroにリンク付きの付箋が自動で吐き出されるというものでした。

書き起こシャーク画面
toittaの前身である社内向けツール「書き起こシャーク」

社内での評判が良く、「同じように困っている人がいるのではないか」と考え、プロダクト化を進めることにしました。

8ヶ月間の進化

書き起こし精度の向上

toittaの進化で特に注力したのは、書き起こしの精度向上です。単に書き起こしを出力するだけでなく、以下の点に重点を置きました。

  • 話者判定:適切に話者を分離し、インタビュアーかインタビュイーかという役割も文脈から高精度に判定
  • 読みやすさの向上:適切な句読点の追加、フィラーワードの除去、段落分割などの機能
  • 文脈の補完:インタビュイーの発話だけでは意味が分からない場合に、インタビュアーの質問を前提として補完する機能

羽山氏は「書き起こし精度に関しては、UXデザイン・ UXリサーチに使うという意味では2つの評価ポイントがあります。 単純な書き起こしの精度だけでなく、 そこから切片化したものが実用になるかまで含めて評価するのが良い」と述べています。

切片化の精度向上

切片化とは、KA法のような質的分析の手法において使用するデータの材料を作成する工程です。本来は動画を見返しながら一つ一つ手作業で行う「職人技」でしたが、toittaではこれを自動化しました。

切片化の精度向上で特に注力した点は次の通りです。

  • スピーカーの役割を考慮:インタビュアーの発話が切片化されないよう調整
  • 文脈の補完:インタビュイーの発話だけでは意味が分からない場合に、インタビュアーの質問を前提として補完
  • 発話の忠実な出力:発話がもともと持っていた「土の香り」1を保持

タグチマリコ氏は「文脈をきちんと補完し、前段の『音楽を選ぶ方法として』のような部分を、誰が見てもざっくりと理解できるように文脈を補完した状態で切片として切り出してくれます。これはいつも手で行っていた作業で、AIから文脈を保った切片が出てきたときは本当に驚きました」と評価してくださいました。

toitta文脈補完画面
toittaは前提となる文脈を補完して切片化する

自動グルーピング機能

インタビューから出てくる切片は数が多く、内容も多岐にわたっています。 分析ではたくさんの切片を統合 していくグルーピングの作業が必要です。toittaでは、生成AIを用いて切片と書き起こしをもとに大まかな出来事ベースのグルーピングを行い、タイトルとサマリーを生成する機能を実装しました。

羽山氏は「AIがインタビュー発話録全体のコンテキストをふまえて意味のあるグルーピングをしてくれる」点を高く評価しました。

レポート・クロスレポート機能

toittaの史上最大規模の開発プロジェクトとして取り組んだのが、レポート・クロスレポート機能です。この機能は、任意の質問を登録すると、それに対応する回答をインタビューデータから自動で整理し、根拠となる発話を添えて5分程度で自動生成します。さらに複数人分をまとめて表形式で閲覧することも可能です。

この機能開発にあたっては、ユーザーの声を元に3つの価値を大事にしました。

  • 速度:5分程度で結果が出ること
  • 任意性:AIが勝手に決めつけず、ユーザーから受け取った質問に沿って回答を出すこと
  • 根拠:生成した回答に信頼できる発話の根拠を示すこと

タグチマリコ氏はデモを通じて「本当に結果が5分で出てきてしまうので、睡眠時間が確保できるようになったんです!」と笑いを誘いながら、実際に業務効率が大幅に向上したことを実感を込めて語ってくださいました。

詳しくはブログ「レポート / クロスレポート機能を正式版としてリリースしました」をご覧ください。

toittaがもたらす可能性

UXリサーチ・UXデザインの効率化

羽山氏は「質的分析は時に血を吐く思いで作業をしなければなりませんでした。グラウンデッド・セオリー・アプローチ(GTA: Grounded Theory Approach)という手法があります。『地に足がついた理論を構築する手法』という意味ですが、あまりに手間がかかるので『地を這いずり、つぶさに小石を拾い集めるような手法』を暗喩しているというジョークがあるほどです。toittaによってこの負担が大幅に軽減され、作業が早くできるようになったことに感動しました」と述べました。

タグチマリコ氏も「AIを活用したサービスを数多く見てきましたが、toittaほど、“AIによって可能になった体験”を味わえるサービスは中々ありません。 本当に私の業務を支えてくれています」と述べ、実務での有用性を強調してくださいました。

新たな活用方法の可能性

イベント中には、コールセンターの発話録の分析や、AIに人格を移して追加インタビューを行うなど、toittaの新たな活用方法についても議論されました。

特にコールセンターの発話分析については、従来のテキストマイニングでは声のトーンやネガティブ/ポジティブキーワードで分析していたのに対し、toittaではコンテキストで分析できる点が画期的だと評価していただきました。

今後の展望

イベントの最後には、toittaで計画している今後のアップデート予定も紹介しました。

大型新機能:インタビュー実施後の結果をもとに意思決定アクションを行うスピードを10倍速くする機能

大型新機能スライド
新機能のコンセプト

インタビューデータから直接アクションアイテムを抽出し、優先度付けを行う機能を開発中です。インサイトから実際の意思決定までのプロセスが大幅に短縮され、UXリサーチの価値がより直接的にプロダクト開発に反映されるようになります。

toittaの進化から見えるもの

toittaの8ヶ月間の進化を振り返ると、単なる技術的な進化にとどまらない、UXリサーチの本質に向き合った深い思索が開発プロセスにありました。私たちが特に大切にしているのは、「土の香り」という言葉に象徴される、質的データの持つニュアンスや文脈を尊重する姿勢です。

川喜田二郎氏の発想法に通じるこの考え方は、AIツールが増加する中で、人間の感覚や直感を尊重しながら技術を活用するという重要な視点を提供していると考えています。

toittaの開発チームは、単に効率化を目指すだけでなく、質的研究の本質を深く理解した上で、その価値を損なわないようにツールを設計してきました。

おわりに

toittaが提供する価値は、単なる時間短縮だけではありません。データの整理や分析にかかる負担を減らすことで、本来注力すべき「意味の発見」や「洞察の獲得」により多くの時間とエネルギーを割けるようになります。

toittaに興味を持っていただけたら、ぜひ無料トライアルを申し込んで、私たちのプロダクトを実際に体験してみてください。


  1. 土の香りとは、川喜田二郎氏の発想法2で用いられる概念で、データが持つ生々しさや文脈、ニュアンス、感情など、生のデータから感じられる本質的な情報のことを指します。質的研究において、この「土の香り」を失わずにデータを処理することは非常に重要とされています。

  2. 発想法とは、川喜田二郎氏が開発した創造的な問題解決や新しいアイデアを生み出すための方法論で、KJ法(川喜田二郎法)とも呼ばれます。データを収集し、カードに記録し、グループ化して図解化するプロセスを通じて、データの持つ意味を浮かび上がらせる手法です。

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