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2026-01-26

人間中心設計(HCD)とは? - リサーチ用語集

人間中心設計(HCD)とは

人間中心設計(HCD:Human Centered Design, UCD: User Centered Design)とは、製品やシステム、サービスの開発において、システム中心の視点ではなく、ユーザー(人間)を中心に考えることによって新しい価値を生み出すアプローチです。

使いやすさ(ユーザビリティ)の向上にとどまらず、ユーザーの文脈を深く理解し、それにもとづいた設計と評価を繰り返すことで、満足度の高いユーザー体験(UX: User Experience)を実現することを目指しています。

国際規格 ISO 9241-210 / JIS Z 8530 による定義では「システムの利用に焦点を当て,人間工学(ユーザビリティを含む。)の知識及び技法を適用することによって,インタラクティブシステムをより使いやすくすることを目的とするシステムの設計及び開発へのアプローチ」とされています。

認知工学者のドナルド・ノーマンは、HCDを「人が関わるデザイン分野の共通の基盤としての知恵」とし、人間のニーズに対する深い考慮を付け加える「哲学と進め方」であると説明しています。

HCDを支える6つの原則

国際規格 ISO 9241-210 / JIS Z 8530 では、HCDの原則として以下を定めています。

1. ユーザ,タスク及び環境の明確な理解に基づいて設計する

直接のユーザーだけでなく、利用によって影響を受けるステークホルダーも含めて特定し、ニーズを理解する。ユーザーの「利用状況」を理解することが設計の材料になる。

2. ユーザは設計及び開発の全体を通して関与する

ユーザーに設計・開発へ関与してもらうことで、利用状況に関する有益な情報が得られる。開発者とユーザーとのやり取りが増えるほど情報が深まる。

3. ユーザの視点からの評価に基づいて設計を方向付け,改良する

ユーザーからのフィードバックを重要な情報源として、ユーザーとともに設計を評価し改善する。“現実世界”のシナリオでプロトタイプを評価し改良する。

4. プロセスを繰り返す

一回きりでなく、HCDのプロセスをくりかえすこと(反復)で望ましい成果が得られる。人とコンピュータとのインタラクションは複雑であり、開発の初期段階にインタラクションのすべてを明らかにすることは不可能である。反復することで開発途中の曖昧さを徐々に除去し、仕様・プロトタイプを修正する。

5. ユーザエクスペリエンスを考慮して設計する

ユーザー体験(UX)はシステムの表現・機能・性能・支援機能に加え、ユーザの経験・態度・技能・習慣・個性にも左右される。感情的側面や職務満足、単調さの排除も含めて考慮する。マニュアル、ヘルプ、サポート、訓練、長期利用、開封体験、ブランドなども視野に入れ、人と技術の機能配分は安全性などを含む多面的要因で判断する。

6. 様々な専門分野の技能及び視点をもつ人々を設計チームに加える

HCDチームは大規模である必要はないが、設計と実装のトレードオフを適切なタイミングで判断できるよう、多様な意見が出る編成が望ましい。

HCDのプロセス(HCDサイクル)

HCDの特徴は、一回きりで完成を目指すのではなく、4つのプロセスを 「反復(イテレーション)」することにあります。それぞれのプロセスで適切な結果が得られない場合は、以前のプロセスに戻って検討をやり直します。

1. 利用状況の理解及び明示

ユーザーがどのような環境で、何を目的としているか(As-Is)を、観察やインタビューを通じて理解する。

2. ユーザ要求事項の明示

調査に基づき、ユーザーの本質的な要求や解決すべき課題(To-Be)を定義する。

3. ユーザ要求事項に対応した設計解の作成

定義された要求にもとづき、プロトタイプなどを作成してアイデアを形にする。

4. ユーザ要求事項に対する設計の評価

プロトタイプなどの解決策をユーザーにテストしてもらい、要求を満たしているか確認する。

混同されやすい概念との関係

  • ユーザビリティ(Usability)

    「効果、効率、満足度」という要素で示されるプロダクトの使いやすさのこと。HCDはもともとはユーザビリティを高めるためのアプローチでしたが、時代とともに対象がより広くなり、ユーザー体験(UX)へとフォーカスするようになりました。

  • ユーザエクスペリエンス(UX: User Experience)

    プロダクトにかかわるユーザーの体験全体を指します。HCDの原則には「UXを考慮すること」が含まれており、HCDはUXを実現するためのプロセスという関係性です。

  • デザイン思考(Design Thinking)

    HCDの考え方を、プロダクト開発だけでなくビジネスや組織の課題解決に応用したクリエイティブなアプローチを指します。

  • アクセシビリティ・ユニバーサルデザイン

    年齢・性別・文化の違い・障害の有無によらず「あらゆる人にとって、わかりやすく使いやすい」ことを目指した設計を指します。HCDにおいても重要な要素です。

参考資料

JIS Z 8530:2021 人間工学―人とシステムとのインタラクション―インタラクティブシステムの人間中心設計 | 日本規格協会

ひとことコメント
(監修者)

Human Centered Design はヨーロッパでの呼称で、アメリカでは User Centered Design と呼ばれます。さらに言うと、ヨーロッパはイギリス英語になるため「Centered」ではなく「Centred」と書き、Human Centred Design が正しい表記になります。


監修者

日本ウェブデザイン株式会社
代表取締役CEO 羽山 祥樹

HCD-Net認定 人間中心設計専門家。toittaエバンジェリスト。使いやすいプロダクトを作る専門家。担当したウェブサイトが、雑誌のユーザビリティランキングで国内トップクラスの評価を受ける。2016年よりAIシステムのPdMとUXデザインも担当。NPO法人 人間中心設計推進機構(HCD-Net)理事。

X(Twitter): @storywriter

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