英語学習アプリ「Langaku」を展開するMantra株式会社では、創業初期からリサーチ文化を根付かせながらも、成長とともに「分析の属人化」「工数の制限」といった壁に直面してきました。そんな中、toitta導入によって見えてきた“新しいリサーチのかたち”とは? 本記事前編では、プロダクトマネージャー山中さんへの取材を通じて、「Langaku」リサーチ体制の変遷とtoitta導入の決め手、その成果を掘り下げます。
「全員で聞く」文化と、成長がもたらしたリサーチプロセスの変化
──まずは、御社の事業と山中さんのご担当業務について教えてください。
山中さん:Mantra株式会社でプロダクトマネージャーを担当しています。弊社の事業は大きく2つありまして、1つはAI技術を活用した漫画や小説の翻訳支援ツール「Mantra Engine」の開発と運営、もう1つは私が担当している英語学習アプリ「Langaku」の開発です。「Langaku」は、漫画を教材として英語学習を楽しく進められるアプリケーションで、特に英語学習における「楽しさ」と「実用性」を両立させることを目指しています。
──「Langaku」では、リリース初期からユーザーリサーチに力を入れていたそうですね。
山中さん:はい。Mantraは設立当初から 「インタビューをしないと成功しない」というのが共通認識で、エンジニアや営業も含めて、全員でインタビューに参加していました。「全員で聞くのが当たり前」という雰囲気があったので、むしろやらないと不安になるくらいでした。
──全員参加というのはすごいですね。その後プロダクトが成長する中で、リサーチ体制に変化はありましたか?
山中さん:はい。運営フェーズに入ると、インタビューの数は増えるのに、分析が追いつかなくなって。KA法を使って価値マップを作ったりもしたんですが、更新をし続ける労力や属人化、チーム内での共有のしづらさといった新しい課題が出てきて。時間と工数が限られている中で、リサーチは続けたいのに、どうやって続けていくか分からない状態になっていました。

toittaを導入し、手作業から解放
──toittaを知ったきっかけは何だったのでしょうか?
山中さん:知人がSNSで紹介しているのを見たのが最初です。KA法を教えてもらった、羽山さん(※)の名前がサービスサイトに載っているのもあって「面白そうだな」と興味を持ちました。ちょうど分析工程のマッピングが手作業で辛くなっていた頃だったので、タイミングがドンピシャでした。
※日本ウェブデザイン株式会社 代表取締役CEO・羽山祥樹氏。toittaエヴァンジェリストとして活動いただいています。──その頃、リサーチの頻度や体制はどうでしたか?
山中さん:基本的に僕がインタビューを主導していて、頻度としては週1〜2件くらい。多い時期は、月に10人くらいやっていましたが、選ばれた数件だけを手作業で分析している状況でした。分析対象を恣意的に選ぶことはあまりよくないな、と思っていたんです。
──トライアルを経て、導入を決めた理由は?
山中さん:一番は、やはり「手作業が要らなくなる」点でした。それまでは、録音データを書き起こしツールでテキスト化し、発話データを付箋に書き出してFigJamにマッピングするという工程で進めていました。そのため、1時間のインタビューを分析するのに数時間かかることもあり、負担に感じていたんです。
それが、toittaを使うと発話録の切片化が自動化されるので工数削減につながり、あいた工数で分析対象も広げられる。これにより、すべてのインタビューを分析できるようになるのでは、と感じ導入を決断しました。
効率化により、新しい手法を取り入れる余裕が生まれた
──実際にtoittaを導入してみて、どんな変化がありましたか?
山中さん:分析工数が短縮されたことにより、リサーチの質と量が向上し、より多くのユーザーの声を反映できるようになりました。1時間のインタビューでも、以前は分析に数時間かかっていたのが、toitta導入後は30分前後に。これは相当なインパクトでした。最初はtoittaから出力された切片データをFigJamに貼って、ストーリーとして並べていくことで、ユーザーの行動や感情の流れを掴む分析に使っていました。

──分析が効率化されたことで、チームやご自身の意識に変化は?
山中さん:ありますね。「次のステップをどうするか」を考える余裕ができました。つまり、ただ分析するだけでなく、それをどう戦略に結びつけるかを検討できるようになりました。そこから、オポチュニティ・ソリューション・ツリー(OST)などの新しいフレームワークを試してみたり、AIツールと連携させてみたりと、リサーチプロセスを進化させることに意識が向くようになりました。
スケジュールの迷いが減り、開発サイクルも早まった
──その他、toittaが与えたビジネス的な影響ってありましたか?
山中さん:次に何を開発すべきかが明確になり、開発チームの工数が空いてしまうことがなくなりましたし、リリースの回数も増えました。また、リサーチプロセスの進化により、プロダクトの成果を具体的な数値で測定し、改善の優先順位を明確にすることができるようになりました。
──その流れが、組織文化にも影響を与えたのですね。
山中さん:はい。データに基づいた議論が増えましたし、開発チーム全体の納得感も上がりました。どの機能を優先するか、その判断がとにかく明確になったんです。結果として、ユーザーの声に基づいた開発サイクルが早まり、「Langaku」の成長にもつながっていると感じています。toittaは、単なる分析ツールではなく、Mantraのリサーチ文化を一段引き上げてくれた存在ですね。
──今後の展望について教えてください。
山中さま:ユーザーインタビューを引き続き重視しつつ、AIや新しいフレームワークを活用して、より効率的かつ効果的なリサーチを行いたいと考えています。
toittaの導入をきっかけに、Mantra株式会社は「ユーザーの声を構造化し、意思決定に活かす」という新しいリサーチのかたちへと舵を切りました。後編では、この変革をさらに加速させたAIやOSTとの連携、その具体的な活用術についてお話を伺います!

撮影:小野奈那子